昨年11月に、ノルウェー北極圏の海を訪ねました。スカンジナビア半島のもっとも北に位置し、氷河に削られて地形が複雑な入江にある集落が目的地です。
冬になるとその辺りに、ニシンの大群を追ってシャチが群れで押し寄せることを、かなり以前に知りました。カナダの尊敬する写真家ポール・ニックレンが、その水中写真を雑誌に発表したのです。北極圏の冬なので海中はとても暗く、明瞭な写真ではありません。しかし、海の白っぽい濁りがその豊かさを伝え、わずかな光のなか爆発するようなニシンと巨大なシャチからは、想像を絶する生命力を感じ取ることができました。強く惹きつけられた私はそれ以来、そこがどこなのか特定する手がかりを探し続けました。気候変動の影響で回遊場所が変化して情報が錯綜し、それでも10年越しにやっと一つの場所を特定するに至ったのです。
私は、酷寒の海に、ウエットスーツで身を包み、腰に10kgの鉛を巻いて飛び込みました。自分の体が寒さに耐えられるかわからないまま、奇跡が起きることを信じて海中を漂いました。そして予期せぬ事態に遭遇したのです。この続きは会場で……。
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〒227-0031 横浜市青葉区寺家町435-1
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「とき」を感じて創った作品集『BEAR TRUTH ヒグマの真実』
昨今、ヒグマやツキノワグマの目撃件数が増え、人とクマの接近から生じる事件・事故が社会問題化しています。クマへの恐怖や危うさを印象づける映像が頻繁に飛び交ういま、有害補殺されるクマの数が増えています。
20年前の知床で、銃を使わずヒグマと共生していたサケ漁師たちの番屋がありました。私はそに住み込んで、“ヒグマの真実の姿“を克明に記録しました。最初から人を傷つけようとするクマはいるのか。人は、ヒグマとどこまで理解し合えて、一定の決まり事のもと、どう付き合うことができるのか。人と野生の問題解決のヒントが、漁師たちの番屋には詰まっていたのです。なぜ駆除せずに漁師たちがヒグマと暮らせたのか、当時の記録をもとにその様子をありのまま本書へ収録しました。
いま、ヒグマの真実を見つめ、野生への畏敬をより深く思い起こす「とき」なのだと思います。
あべ弘士氏との対談
2011年の北極海ヨット探検をはじめ、私とあべ弘士氏は数多くの探検旅を共にしてきました。今回の対談は、きっとこれまでの旅の話になるはずです。私は、昨年一人で渡ったノルウェー北極圏の、ニシンとシャチの話をしたいと思っています。地球という星において凍る海がいかに重要か、凍る海が地球の豊かさを創造する巨大装置である事実を、皆さんに訴えかけたいと意気込んでいます。しかし、あべさんとはいつもぶっつけ本番のトークなので、私たちの話は筋書きのないドラマなのです。互いにヒグマの著作を偶然手がけたので、クマの話になるかもしれません。いずれにせよ楽しい話になることは間違いありません。
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