2020年が終わろうとしている。コロナに明け暮れたこの1年は、いま私の仕事部屋から見える天売島の海のように大荒れだった。そうしたなか、数日後に新刊写真集『BIRD ISLAND TEURI』が手元に届く。掲載した作品のほとんどが、この3年に撮影したものだ。振り返ると3年という歳月は、写真の世界に身を置く誰もにとって激動だったに違いない。
3年前、大きく変わったのは自分の機材だった。私は、海外取材を含め遠くへ機材を持ち運ぶことが多く、かさばる荷物とその重さに年々負担感が増大していた。充電機器を含めシステム全体がコンパクトで軽くなって欲しいとの思いを強くしていた。キヤノン歴30数年で、その機材群に全信頼を置く私はそれ以外触れたことがなかった。ところが、小型軽量というニーズにピタリとはまる機材があるのを知った。ソニーの αシリーズだ。優れた動体へのピント追従機能も備えていて、このフルサイズミラーレス一眼を使ってすぐにのめり込んでいった。
時速80kmで海や断崖を飛び交うケイマフリといえど、精通した天売島のフィールドでそれを手にすれば、動きにピタリと合わせて切り取るのは容易とさえ思えた。逆光など光の難しい場面に突っ込んでいく鳥であっても、諦めず果敢にレンズを向ける自分がいた。それまで5年、いや10年かかって撮り貯めた作品を、1年の撮れ高があっさり抜くほどの手応えだった。容易にしかも正確にレンズを操ることができ、コンパクトである利点は想像以上に絶大だった。私にとりこの機材は鬼に金棒で、表現の幅が広がることで新しい作品が生まれていった。
機敏な野生生物の撮影は、撮影者の技術にプラスして、機材性能に依るところが大きい。私は新しい表現を求めるために、さらに進歩していく機材から、必要とするものを選択していくことだろう。