ワイルドライフ 撮影奮闘記 Vol.4-1

 「NHKが誇る大型自然番組『ワイルドライフ』をつくりたい!」

 ムービーなど回したこともない私が、大それた無謀な「夢」を抱いたのは2014年夏のことだ。番組の舞台はもちろん天売島である。

 何が無謀かというと、映像の世界は、一瞬の一枚を切り取る写真とは別モノだ。写真家がいくら奮闘しても1時間番組の制作などもってのほかである。さらに映像機材は高価でかさ張り、相当重い。カメラ、三脚、望遠レンズ、音声機器など扱う機材は多く、一人でこなす仕事ではない。正直いうと自分自身、絶対手を出すまいとそれまで決めつけていた。ではなぜやろうと思ったのか?

 写真用デジタルカメラが、超高画質4Kビデオカメラを兼ね備えて世に出たからだ。それまでは百万単位のお金をかけて機材を手に入れなければ、プロ並みの映像は撮れなかった。しかも撮影はふつう数人がかりとなる。それが新しい機材だとカメラ本体で投資額は30万円ちょっと、所持しているレンズが使えて、工夫しだいで自分一人で撮影可能になると私は思ったのだ。

 同じ2014年、私は断崖絶壁のケイマフリの巣で、定点カメラを使った調査の可能性を探りはじめていた。ケイマフリは天売島の海鳥の象徴で、世界で最も美しく魅力的な鳥と私は考えていた。それなのに調査が進まず、その繁殖生態は謎に包まれたままだった。その一部でも解明して、美しい求愛や躍動的な動きとともに広く伝えたいと強く思っていた。そんな一心で続けてきた写真撮影だが、優美な動きを表現するなら映像が適しているのではと考えはじめていたのだ。ケイマフリの表現のためなら、手法はいとわなかった。

 この年の定点ビデオ調査に手応えを感じた私は、調査映像も活用してケイマフリを主役に立てた番組にしようと決意を固めた。