世界初! ケイマフリ巣内行動の記録 Vol.2-2

強雨が災いして孵化しなかった1卵

調査対象の巣は、赤岩周辺の断崖絶壁にある岩の隙間の奥だ。2020年は、4月27日に初めて親鳥が巣内に飛来し、5月11日・14日と1卵ずつ産卵が行われた。抱卵期間中、前年にはなかった強い雨が数回降った。その影響で水滴が岩を伝って巣内の産座まで流れ込み、土がわずかに流されて微妙な傾斜ができた。これが予期しない事態を招くことになる。第2卵が傾斜によりじわりじわりと岩壁側へ転がっていき、うまく抱けないケースが見られはじめたのだ。嫌な予感が的中しないことを強く願った。

6月9日、初卵が孵化すると親の注意はヒナへ注がれ、残った卵への注意力が一気に低下した。熱心にヒナを温めても壁際の卵は放置されることが多くなり、ゆくゆくは放置状態となってしまった。あとでわかったことだが、卵内のヒナは最終段階まで成長していた。2羽そろって成長する姿を見たかっただけに、この事実はとても残酷なものだった。

産卵を前にしたペアが巣内に入るとさすがに窮屈だ(2020.5.1)

足ひれを使って産座をならすのは主に♂の仕事だ(2020.5.3)

水色の地に黒い斑が入った2卵がある巣にわずかな枯れ草が見られた(2020.5.15)