飴色のオキアミ群 「瞬撮『真』世界」Vol.1-3

前の日に目撃したオキアミ群。その水中の様子を記録するため、小型水中カメラの準備を万端に整えていた。ところが予報に反し、3月26日の夜が明けてみると海が波立っていた。心は沖合へ飛んでいただけに落胆が大きかった。この日は時間とともに波が出る予報で、出航は絶望と思われた。それなのに2階の仕事場から、気になって海ばかり見ていた。これまで観察・記録できた、水面より上の海鳥の様子だけでも十分興味深い。でも、それが海中と連動している行動だとすれば、海中も記録しなければ物語は完結しない。だからどうしても沖へ行きたかった。すると変化が起きたのだ。気のせいかもしれないが、ほんの少しだけ波が静まったように見えた。風も弱まった。「ダメなら戻ればいいだけさ」と開き直る。午前8時、瞬時に行動を起こしてボートを沖合へ向けた。

海は前日より明らかに悪い。沖から寄せてくるうねりが高く、波長も長いのだ。数回に一度は特に大きなうねりが押し寄せてくるのは、近くの海が荒れている証拠だ。私は速力を落としたまま慎重に沖合へ進んでいった。

カモメ類の群れがようやく見えた。前日と明らかに違うのは、ウトウの大群も一緒に見られることだ。潜水を繰り返していることからオキアミや小魚を捕食しているに違いない。私はゆっくりとカモメ類に近づいて、棒の先に取り付けた小型カメラを水中に差し込んでみた。カメラがとらえる映像をボート上で同時確認する方法はない。目で見た感触で撮るしか方法がないのだ。海中のオキアミの群れはずっと目視できないままで、手応えのまったくない撮影が続いた。さらに1km沖合には大きなカモメの群れが見えるが、そこへ向かうにはもっと大きなうねりや波を覚悟しなくてはならない。でも、この機会を逃したら次のチャンスはないかもしれない。心はすぐに決まった。

風が出てきて、白波が立ちはじめた。目標のカモメの群れが目の前に迫ってきているが、波間に消えたり現れたりを繰り返すほどうねりが高い。舞い上がったオオセグロカモメやウミネコが、海の一点に集中して刺さりはじめた。オキアミが水面に浮上しているのだろう。私はカメラをいつでも水中に入れられるよう身構えた。青黒い水面の一箇所が飴色にぼんやり変色しているのがわかった。カモメ類もそこに集まりはじめている。どうにかそこにボートを近づけられたそのとき、水面下からオキアミの大群が目に飛び込んできた。迷わずカメラを海中へ入れてみる。

カメラは、膨大なオキアミの核心部分をとらえているように見えた。ときどき海中がキラキラ輝くのは、魚群がオキアミ群に突っ込んでいるからではないのか。こうして海中を注視する一方で、うねりが来る方向に舳先を向けるなどのボートコントロールを怠るわけにはいかない。海が奇跡的にも表情を緩めたほんの1時間。その間、撮影への挑戦をすることができた。

誰も見たことのない海洋ドキュメント。そのほんの1ページの記録に成功することができた。